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東の空が白んで朝日が辺りを照らし出していく。その光を眩しそうに受けて目をすがめた。四月の空気はまだ凛としていて肌寒く朝霧がうっすらと辺りを包んでいた。
夜な夜な集まりレディースの総会も終わり昨日誕生日を迎え16歳になった桐野リナは胸いっぱいに空気を吸い込み、清々しそうに微笑んだ。
「嬉しそうだな、リナ」
「はい」
振り返り声の主に満面の笑みを向けた。だが、嬉しそうなリナとは対照的に浮かない表情の依月はそっと溜息をついた。
5歳年上の依月はリナがレディースに入ることを反対していた。
リナには暴走族などには染まらずに普通に生活して欲しかったのだ。
「センパイ?」
「ごめん、リナ。あたしがレディースじゃなきゃ、リナも特攻服着なくてすんだのに……」
「何言ってんスかぁ!! アタシ嬉しいですよ! 憧れの特攻服!! 16になってやっと着れたし、総会だって初めての参加。後ろの方だったからよく聞こえなかったけど」
まだ興奮冷めやらぬリナを見ながら特攻服を着てしまったならもう仕方ないと悲しげに笑う依月だったが、そこへ後ろから声がかかる。
「おはようございます。桐野リナさんとお見受けいたします」
二人で同時に振り返ると、スーツを来た初老の男が立っていた。
「契約により、今日から我が屋敷にて働いていただきます」
「はぁ?」
「リナ、誰? 知り合い?」
問われたリナにも見覚えがなく、訝しんで男たちを睨み返す。
依月がリナを庇うように立つと初老の男の後ろから型のいい男が二人現れ、リナを囲うと無理矢理待たせていたリムジンに乗せた。
あまりに隙のない動作に抵抗する間もなかった。そして、依月も一歩も動けないまま茫然と佇むことしか出来なかった。
「え、ちょっと待てよ!! センパイ!!」
「リナ!! リナ!!」
慌てて依月はリナを助けようと追いかけてくるが残った男に止められてしまいあっという間にねじ伏せられてしまう。
その姿を乗せられたリムジンからかじりつくように見たリナは声を張り上げた。
助けに行かなくてはと焦る。
「センパイ! ……おい、降ろせよジジィ!!」
だが、隣に座る初老の男に凄むが顔色一つ変えずに運転手に声をかける。
動き出す前に降りようとドアノブに手をかけたが、すでに鍵がかかっていて開けることが出来なかった。
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