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「え、ちょっと待てよ!! センパイ!!」
「リナ!! リナ!!」
慌てて依月はリナを助けようと追いかけてくるが残った男に止められてしまいあっという間にねじ伏せられてしまう。
その姿を乗せられたリムジンからかじりつくように見たリナは声を張り上げた。
助けに行かなくてはと焦る。
「センパイ! ……おい、降ろせよジジィ!!」
だが、隣に座る初老の男に凄むが顔色一つ変えずに運転手に声をかける。
動き出す前に降りようとドアノブに手をかけたが、すでに鍵がかかっていて開けることが出来なかった。
車の窓からは依月センパイが起き上がり、何やら男たちと話をしている姿が見える。暴力は振るわれなかったことにリナはホッとして息をついた。
「契約ですので。運転手、屋敷へ」
そんなリナを気にした様子もなく初老の男が言うとリムジンが動き出した。
驚いて運転手に掴みかかりそうな勢いでリナが「どこ連れてく気だよ!」と叫んだが、答えは帰ってこなかった。不安を覚えてリナは依月センパイを振り返った。
すると、依月が追いかけてきている。
「リナ!」
「っセンパイ! センパイ!!」
人間の足ではさすがに車には勝てず角を曲がる頃には小さく見えなくなってしまった。
「…セン…パイ……」
力なくリナは呟いて、がっくりと肩を落とした。何がどうなっているのか一体この男たちは誰なのかそして、これからどこに連れて行かれるのか何もわからなかった。
だが、リムジンに揺られること約一時間。昨日から寝ていなかったリナはうとうととしていた。
「桐野リナさん。着きました」
ゆさゆさと揺さぶられうつらうつらとしながらもリムジンから降りる。
寝ている間に緊張も不安も消え去り、リナはのんびりと答えた。依月センパイが怪我をしなかったという事実だけで十分だった。
リナは他人の事を思いやるあまりに自分の事がおろそかになってしまう所があり、それが依月センパイの心配一つになっていたが当のリナはそんなこと気づいていない。
「ふわぁぁ~っと……あー肩凝った……」
大きいあくびをして降り立つと、周りを見渡た。まるで宮殿のような屋敷の前に停車していた。リムジンが止まっているロータリーの中心では豪華な噴水が水を吹き出している。
どこかの豪華なホテルを思わせるような建物にリナは小さく感嘆の声を上げてから、今思い出したように隣にいた初老の男に聞いた。
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