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目を擦りながら起き上がったリナの髪を撫でて頬に触れるとリナはその手を掴んだ。
「どこかに行くの?」
不安そうな声に蒼斗は安心させようと優しく諭す。
「出掛けない。リナの元に戻ってくるから」
それでもリナは手を離さない。蒼斗はスッと身を屈めてリナに軽くキスをした。
「大丈夫」
驚いて固まるリナに笑みを残し視線を宙に向けると、呆然と突っ立っていた宙の顔が引き締まり不機嫌な顔になる。反応に満足して目を細めると部屋を出た。
取り残されたリナと宙だが宙はとにかく機嫌が悪い、最悪と言っても言いくらいだが耳につけたイヤホンから「異常があればすぐに」と蒼斗の声が聞こえて舌打ちをした。
「リナ、嫌ならちゃんと嫌がれよ……」
怒りの矛先がリナに行ってしまう。違うとわかっていてもどうにも処理しきれない感情だった。
「いやっつーか……びっくりして、なに? なんなの? なんかあった?」
状況が飲み込めていないリナは混乱しているようで、宙は小さく息を吐き出すとリナのいるベッドに座る。
「九条の敷地に侵入。今、蒼斗が片付けに行ったから大丈夫だ」
「え……侵入?」
「そ。ほら、北の屋敷に地下があったろ。あそこから何度か入り込んでたみたいだ。捕まえれば手引してたやつも目的もすぐわかる」
「ど、どろぼー?」
「一言で言えば泥棒だよな。早目に気づいたから対応できたけど」
「危なくないのか? 蒼斗……ケガすんじゃ……アタシ、行く!!」
後半は独り言になって呟いていたが、いきなりベッドから飛び降り自分の部屋へ駆け込んだ。
「お、おい……待っわあぁ!!」
追いかけたリナが部屋に明かりをつけて着替えていた。慌てて蒼斗の部屋に戻る。はっきり見たわけじゃないが妙な展開に心臓が対応しきれていない。
背にしたドアがいきなり開いて動揺する宙は後頭部を打ち付け、前へつんのめる。盛大に倒れる寸前で足を踏み出しなんとか免れた。
「いって……着替え、はやっ!!」
痛みの残る頭を押さえながらリナを見るといつものメイド姿だった。だが、驚く宙をよそにリナは蒼斗を追い掛けようとする。
「ちょっと待てって!! 話し聞けって!!」
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