愛しき人

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「わ、わかった」  返事をして会話を切ると宙は部屋を飛び出してリナを追った。  侵入者と接触してしまっただろうか……。そんな不安が脳裏に過ぎるが無理矢理吹き消して2階東へと向かう。  間に合ってくれ、と強く祈りながら宙はスピードを上げ全力で走った。  一方のリナは蒼斗だと思い込んだ侵入者の影を追っていた。 「えっと……この辺じゃなかったかな? あれ?」  防犯カメラに映っていた場所に来ても誰もいない。いると思っていただけに急に不安が押し寄せてくる。  もし、蒼斗が侵入者と鉢合わせしていたら、いくら強いとは言え不意打ちされたら敵わないかもしれない。 「早く見つけないと!!」  暗闇に浮かぶ常夜灯の明かりが焦るリナを追い詰める。  書庫室や使われていない部屋もドアを開けて確認していく。時々開かないドアもあり辺りを見回す。続く廊下の先の曲がり角に人影が一瞬見えた気がした。 「あ、蒼斗!!」  なんの疑いもなく走り出し、角を曲がるといきなり風を切る音がしてとっさに体を引いた。はらはらと顔に何かがかかり頭を振って触れてみると自分の髪の毛だった。 「蒼斗……?」  そこで初めて異様な空気を感じとりリナは構える。 「お前……蒼斗じゃないな」  薄暗がりで顔が見えないが、抗戦しようとする気配がある。手には常夜灯を受けて鈍く光る刃物があった。体を低く構えた時だった、いきなりぐんと後ろに引かれ態勢を崩してしまう。 「リナ、何してんだ!! 下がってろ!!」  驚いて視線を上げると息を切らして駆け付けた宙の背中がある。 「ああ! もう、鉢合わせしてんじゃねぇよ!! つか、お前誰だ!!」  宙の質問には答えずに侵入者は踵を返して走り出してしまった。追いかけるリナを宙はしっかりと止めた。 「宙!! 逃げんだろ!! 捕まえないのか!?」  頭が痛いと宙はため息が漏れてしまう。しっかりと肩を掴んでリナを見据える。説得してこの場から離れてもらわなくてはならない。これ以上危険にさらすわけにはいかないのだ。 「リナ。戻れ、部屋にいるんだ。あいつは俺達で捕まえるから」 「アタシだって戦える!!」 「ダメだ。蒼斗だってリナに部屋に戻るように言ってるし、おしおきだとか言ってたぞ」  その言葉にリナは青くなる。
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