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耳慣れた声に目をすがめた。よく聞く、リナにとっては大好きな人の内の一人だ。
「……香奈? 香奈なの?」
一気に体中から力が抜けるとどっと安堵が押し寄せてきた。
「あーよかった! 香奈だったのか、ちゃんと返事しろよなー!! ビビっちゃったよ」
返事をするなとかしろとかめちゃくちゃな事を言うリナは照れ笑いをして香奈に近づいていくが、香奈の様子がおかしい。ふと、立ち止まった。
「香奈ちゃん……どうしたの? こんな時間に……なんでここにいんの?」
静寂の中にリナの問い掛けは弱々しく響く。嫌な予感しかしない雰囲気に頭の中では違うと否定の言葉が繰り返される。それと同時に浮かび上がる侵入者の姿に不安が募っていく。。
「リナちゃん、それ以上近づかないでっ……!!」
悲痛なか細い声が響いた。薄暗がりでも香奈の肩が小刻みに震えているのがわかり、リナはうろたえてしまう。何か問い掛けようとしてリナは言葉を飲み込んだ。香奈の持つものが鈍色に光のが目に入る。
「香奈、自分で何持ってるかわかってる?」
それは、先程の侵入者が持っていた刃物と同じ物だ。だが、香奈持つ刃物は香奈自身と同じく小刻みに震えていた。
「リナちゃん………」
消え入りそうなまるで助けを求めているような声だった。そして、一気に香奈が体ごとリナに突っ込んでくる。リナはひらりと身をかわしひたたび香奈と対峙する。
「香奈、ちょっと落ち着こうよ。アタシは神崎さんから体術教わってるんだよ、わかるだろ?」
リナの言葉には耳を貸さず香奈がまた刃物を振り上げてリナに襲い掛かるがまたかわす。
「まさか、この前の昼飯のおかず取ったからとかじゃないよな? 怒らすようなことしてたら謝るから、刃物仕舞いなよ。香奈、頼むから……」
香奈の息遣いが荒いのが伝わってくる。極度の緊張と恐怖を感じているに違いない。そして、今この状況にお互いが動揺して打開策を探していた。
「アタシは香奈を傷付けたくない、このまま刃物向けるなら香奈を倒さなきゃならないよ……」
説得出来ればいい、説得して香奈から話しを聞きたいとリナは思い香奈を見るが、香奈はゆるゆると首を振る。
「もう、ダメなの……」
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