契約

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「あれ……ここ……どこ?」 「職場兼宿舎にございます」 「宿舎? え……つか、じーさん誰? アタシねみぃんだけど」 「あなたが桐野リナさんね。さぁ!こちらへ」  階段を少し上がった玄関から中年の女がリナを呼ぶ。初老の男をみると「行きなさい」と言うように頷いた。リナは怠そうに階段を上がると中年の女に従う。 「まず、身体測定をします。そのあと屋敷内を案内します」 「はぁ~……」  小部屋へ通され、待ち構えていた三人のメイドに体のあちこちを計測された。初めての事に戸惑ったのは最初だけであとは身を委ねるようにして素直に従った。  危害を加えられないとわかると、警戒することもない。計測が終わるとあくびを噛み殺しながらリナは着替えた。 「では、案内しますが……」  特攻服姿のリナを見て中年の女は困った顔をした。場違いにも程があると言いたげな雰囲気だ。 「その格好では……とりあえずサイズの合うものを着ていなさい。これから貴方はここでメイドとして働くのですから」 「え! 着替えんの? ……なんでアタシここで働く事になってんの?」  リナの声は届かないのかテキパキとメイド服が用意され、着替えると屋敷を案内された。  寝耳に水どころかどうしていきなり連れてこられた場所でいきなりメイドとして働かなければならないのか理解できない。  そして、目の前に現れる人物たちは皆、リナの知らない人ばかりなのである。 「なぁ、おばさん! アタシの話聞いてる?」 「おばさんではありません。槙です。それにエプロンのリボンが逆さ結びになっています。直しなさい」 「えぇ~……」  もたもたとリボンを結び直すがうまく行かない。見かねた槙がリボンをキュッと結ぶとリナはにこりと笑い槙を見た。 「サンキュー」 「言葉遣いも直さなくてはならないわね」  溜息交じりに槙は言い、こめかみを抑えた。そしてリナを伴って屋敷内を案内していく。  屋敷は広かった。  ここは宿舎も兼ねてはいるが本館であり、社長と専属メイドだけの屋敷。他のメイドや執事達は別館に宿舎があるらしい。  仕事は主に清掃や社長の身の回りのお世話だと言われ、リナは気のない返事を返した。
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