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「部屋の場所も覚えなさい。資料室もありますから。それと今、宿舎がいっぱいなので桐野さんはここで寝泊まりすることになりますからね」
「は~い……」
「ここがあなたの部屋よ」
通されたのは8畳ほどの綺麗な部屋だった。箪笥やベッドなども揃っているが、そのほかに飾りはなくシンプルで人の暖かさがまだない真新しい部屋に見えた。
リナの住むアパートは古く、狭苦しかったがそれを不満に思ったことはなかった。
そして同じアパートに住む依月センパイと良く部屋は行き来していたため依月センパイの家も自分の家のように感じて育った。
リナは初めて個室というものを与えられ、しかも自分の部屋がこんなに広くてしかも一人で使っていいと言う事に嬉しくなる。
「……アタシの部屋!!」
喜んで部屋に入ろうとすると槙に呼び止められた。寸止めを食らって槙を見ると厳しい目を向けられてしまった。
「桐野さん。まだ説明が終わっていません。これから一番近いホテルへ行って仕事の案内をします。あなたの力量も見るのでしっかり働いてくださいね」
リナは槙の言葉に固まった。
「え!? 早速仕事すんの?」
そして、言われるままに再び車に乗り込むとクリスタルパレスと呼ばれるホテルに到着した。
槙に指示に従い仕事をしてみたが、全く出来なかった。リナにとっては見るものすべてが初めてで仕事することも初めての経験だった。
それでも、弱音も愚痴も吐かずにリナは動いていたが失敗が続き槙を呆れさせるだけだった。
ようやく槙から解放されリナに用意された部屋に戻れたのは夜になってからだった。
別館の宿舎で他のメイドや執事と食事を共にしたが、みんなリナをびっくりした目で見てリナと目が合うとあからさまに反らしていた。
それも気にせずにリナは美味しい料理に舌鼓を打って満足する。
失敗しかしていないとは言え、働いた後の食事は格別に美味しかった。
「あー! なんか疲れた~……」
ばさばさと大胆にメイド服を脱ぎ下着姿でベッドに横たわる。満腹感で満たされると疲れもどっとやってくる。
落ち着いた頭で今日の事を思い返していた。
「アタシの特攻服……どこに行ったんだろ。……依月センパイ、心配してるかなぁ……」
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