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すべてリナの好みとは正反対のものはかりで、うんざりしてしまうが手元に何もないのではどうしようもない。
溜息をつくと風呂へ入る準備をしたが、その途中で槙に別館に大浴場があると教えられたことを思い出してそっちに向かうことにした。
この本館には台所も風呂場も完備されているが、メイドや執事は食事は別館の食堂でとるように言われていた。
食堂には太った料理長と他数名が働いていて、槙が紹介してくれた。夕食の時も厨房で忙しそうにしていた姿が脳裏に残っている。
独り風呂場に着いたリナは思った以上に広い浴室に感動していた。数人のメイドもいたがリナの姿を見るとそそくさと浴場を後にして、ほぼ貸切状態でリナはゆっくりと浸かり一日の疲れを洗い流した。
「あーいい湯だった」
「長風呂し過ぎだ」
別館から戻り部屋で寛いでいる所にまた男が現れた。そして、リナの恰好を一瞥して視線を逸らした。
「パジャマのズボンくらい履きなさい」
そう言われて嫌そうな顔をしたリナだが、「へいへい」と適当に返事をしてズボンを履くと男に言われ、後に続いた。
「あれ? なにこの部屋?」
リナに与えられた部屋より断然広く、すべてが規則正しく整えられている。モノクロで統一されているが逆にそれが温度を感じさせずにどこか生活感のない印象を与えていた。
息が詰まるな、とリナは感じていたが男は言い捨てるようにリナの問いに答えた。
「私のプライベートルームだ」
「は?」
「そこに座りなさい。今から話をしよう」
言われるままにソファーに座ると男はパソコンや様々な書類が乗ったデスクにつくと話し出す。
「まず、私が君の雇い主の九条蒼斗だ。君は今日からここでメイドとして働いてもらう。職場の事は槙に教えてもらっただろう」
九条蒼斗は高級ホテルを経営する九条グループの社長だった。そして、昼間に行ったクリスタルパレスは九条グループが経営するホテルの一つだと簡単に説明された。
だが、リナにはどうしてこんなことになったのかが分からない。
「いきなりなんでここで働く事になってんの?」
「契約したからだ」
「だから契約って何?」
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