序章『入学式』

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――出会いは単純な物だった。 私は母の影響でジャズにとても興味を示した。 母はプロの音楽家であり、それと同時にギターの腕はプロに退けを取らない技術者。 しかし、中学校にはジャズバンド部はあらず、私は仕方なく吹奏楽部に入ったのだが、知らないうちに何故か廃部。 だから、高校は文化系クラブが多い、『奏ヶ丘女子高等学校』に入ろうと頑張って勉強し、今年入学することになった。 そこからだ、私と彼女の音楽の出会いは―― 入学式の日、私はいつもより早い時間に目を覚ましてしまった。 というよりも、ケータイの目覚まし機能を一時間早くセットしてしまったのが事実。 よくあることだ―― ――と、間違ったことを言い聞かせ、私は身構えて布団を思い切り蹴飛ばして起き上がる。 その現在7時半。 私はベッドから降りて等身くらいある鏡に近寄り、寝癖MAXの頭を見て、少し笑ってしまう。 「(変な頭……)」 こんな頭で高校は行けないなって思いながら、部屋から出て、洗面所へと向かった。 先程の悲惨な髪型を再び見るのはいささか歎きたい。 髪の寝癖をとっている途中、後ろに人影が見えたので振り返ると、 「入学式は10時からよ?えらく早起きだね」 ――って私の母は笑いながら、少々呆れたように言ったのだった。 でも言えない。 目覚まし早くかけてしまったなんて絶対言えない。 「たまたまだよ」 と、私は嘘をつきごまかした。
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