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「着いた」
男の声と共に足元に、ヒヤリとした感触を覚え、驚きの声を上げる。
-あの世は寒い所だと、そう言っていたのは誰だっただろうか?
-或いはこの世ならざる者たちが、毎夜耳元で囁いていた言葉だったのではないか?
-今度は自分が誰かの耳元で嘆き呟く番なのだろうか?
それらの考えが頭を巡りみるみる血の気が引いていく少女の耳に、もう聞くことはないはずの音が飛び込んできた・・・・・・
-人々の歓声-
-太鼓の音-
-盆踊りのお囃子(おはやし)-
「っ!!」
「……なぜ!?だって今は!?」
そこでは間もなく祭りが始まろうとしていたのだった。
「何も祭りってのは夏だけに限ったもんじゃない・・・・・・だろう?」
先ほど男が言っていたのは本当のことだったのだ。
声もなく息を呑む少女のその瞳は、
夕焼け色に染まった涙を湛え、それはそれは美しく輝いていた。
「やれやれ、
『あなたの死を望みます』か・・・
お前もとんだ裏の顔があったもんだな?ええ?
・・・だがまぁ、死神の贈る花として相応しいっちゃ
相応しいか・・・」
そう苦笑しながら、いつの間にやらもってきていたガランサスを、元生えていた場所に埋め戻した。
おもむろに振り返り少女の顔を確認すると、満足げな笑みを浮かべ、雑踏の中へと消えていった。
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