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――郊外
「…嫌な風だ」
透き通るような晴天、初夏の少し汗ばんだ体には気持ちのいい風。
…しかし、何かを予感させた。
風は古来から様々なものを運ぶ役割を担ってきた。
植物がその芽を増やす為の種子であったり、疫病であったり。
(何か…良くない事が起きなければいいが…)
「返して」
不安の出所を探っていると、エリの声がその思考を止めた。
「こんなガキが能力者だなんて、世も末だな」
見れば数人の若い男がエリのぬいぐるみを手にからかっていた。
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