予兆

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~イスバル共和国・イスバル城~ 「噂には聞いておったがそれ程とはな。」 執務室のいかにも高価そうな椅子にもたれ掛かりながら、男は呟いた。 「はい。 かつての民を一番に考えていらっしゃったステック王と、今のステック王とではまるで別人の様です。 力による圧政、税金の引き上げ、王に意見する者に対しては、大臣でも斬首。 さらにはお止めになったお妃様でさえ城で監禁されているとか…」 報告している騎士は悲しみと悔しさを圧し殺した表情で王に告げた。 「そうか… 出立の準備をしてくれ。 儂はステック王と直接話がしたい。」 「はっ!!」 王は椅子から腰をあげると、近衛兵に指示をする。 兵士は扉の前で一礼をし、外へ出ると静かに戸を閉めた。 「ステックよ… まさか呑まれたか?」 王は慌ただしくなった執務室を出ると、一人呟くのだった。
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