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その日、俺は人を殺した。もうすぐ日が変わるという時間に、ただなんとなく、呼吸するのと同じくらい当たり前の動作で、殺した。どんな奴だったのかは分からない。男なのか女なのか、子供なのか大人なのか、覚えてない。だが、覚えてなくても、記録はしてある。殺す前に記録する。
別に今回が初めてじゃない。今日も殺して、これでこれまでもこれからも止まらない全殺記録をまた一つ多くした。殺した奴の数は覚えている。実際は、記録してるだけだけど。
「キミ、1人?」
夜の繁華街、煌びやかな人工的な光が眩しい。そんな中に俺はいた。そして、後方から話しかけられた。
振り返れば、そこに若い男が5人いた。
「僕のことですか?」
返事をする。殺人しないときは、『僕』が話してくれる。
「そーだよ。キミ1人なら、今からオレらと遊ばねえ」
「てゆーか、この子一人称『僕』だし」
「そんなことより、こんな時間に1人は危ねぇよ」
5人が好き好きに喋る。そぅしてる内に、腕を掴まれた。「じゃぁ、行こっか」という声と共に。
後で、思った。「触らなきゃ、大丈夫だったんだろうな」と。そう思った。思ったのは、5人を斬殺してからだった。
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