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5人を殺してから、ぶらぶらと繁華街を抜け、古い家が並ぶ通りを通過して、築30年のアパートに行った。
カツンカツンとリズムを紡ぎながら、アパートの階段を上がり、アパートの一番橋の部屋へと向かう。
「こーくーん、巧貴くーん。篠ノ藤巧貴くーん。僕ですよ~。藤丘優助ですよ~。」
殺人鬼の俺は、藤丘優助にバトンタッチして、知り合いの部屋の扉を、ノックした。そうして、俺は俺の中で眠った。丁度、日付が変わったころだった。
「また、こんな時間かよ。」
扉が開いて、中の住人の声がする。
「しょーがないですよぉ。僕にだって、予定があるんです」
僕は中から出てきた、背の高く華奢な体で、黒縁の眼鏡と肩まで伸びた黒髪の篠ノ藤巧貴に言った。
「まぁ、何でもいいや。取りあえず、おかえり。」
巧貴くんが、僕の頭にポンッと手を置いた。そして、そのままヨシヨシと手を動かした。
「はい、ただいま。」
「おぉ、『ただいま』が言えるようなヤツになってるな。」
「そのくらい当たり前ですよ~。」
「出てった時は、不良少年だったお前が、帰ってきたら、優秀な青年かよ。ま、何でも良い。中入れ」
「はいっ」
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