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だがリカの異様な執着心で、その揺れた心が冷静に戻った。
「えっと、西遊記の……」
「違ぁぁう!」
リカは血走った目で机を叩いた。
ジュンはタイミングよくマグカップを持ち上げていたから、コーヒーが氾濫することはなかった。
「でも西遊記にも出てくるよね」
「それとこれとは違うの!」
「あ、ごめん」
「分かってくれれば良いのです」
リカは正座をしてジュンの正面に座った。鋭い威勢はなくなり、穏やかな女性に戻った。
「ところでジュンさんも孫悟空くらい知ってますよね。もちろんドラゴンボールの方の」
「あ、まあ。あまり詳しくないけど、かめはめ波……だっけ?」
「知ってるじゃないですかぁ!」
「いや、ほんと、そのくらいしか……」
「初めて悟空がかめはめ波を使ったときなんて、ホント、感動でしたよね!」
リカはジュンの事を違った方向で捉えていた。しかも付加疑問でわざわざ尋ねられてもどうしょうもなかった。
「あ、うん」
美人に良い顔をしたいという、悲しい男の本能が勝手に口を動かしていた。
目の前の美女はニコニコと、同志を見つけた喜びで満ちていた。
「フリーザを倒したときのトランクスなんて、とってもかっこいいですよね」
「フ……?」
しかしジュンの疑問符に気付くことなくリカは話を続けた。
「ちなみに、髪の毛をここだけ黄色く染めているのも、サイア人になったときのトランクス様をリスペクトしているからなのです」
リカは髪の毛の黄色い部分をクルクル回し始めた。
「そ、そうなんだ」
「ちなみに、ジュンさんはマンガ版とアニメ版、どっちが好きですか?」
「えっと、マンガ、かな」
明らかに知ったかぶりだった。せめて嘘をつかないようにと、ジュンがアニメよりマンガを見る機会が多いゆえの答えだった。
「ですよね!ですよね!ですよね!ですよね!」
リカは一気に顔を順に近づけた。危うく接吻するところだった。リカはジュンの気持ちに気付いたらしく、すこし顔を下げた。
「ごめんなさい。つい興奮しちゃって」
リカは後ろ頭をかきながら、舌を半分出して言った。
かなりかわいかった。
「ところで、どの場面が好きですか?」
「へっ?」
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