新生活

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 リカの質問は唐突だった。まぶたを愛くるしく動かす美女を前に、質問をスルーする選択肢はなかった。 「修行……のとき、とか」  またしても知ったかぶりだった。  リカは突然ジュンの手を握り締めた。 「えっ!」 「私もそこ、好きです!」  困惑するジュンに、リカは熱かった。 「トランクス様がベジータと精神とで、時の部屋で修行した後、二人で出てくるところなんて、かっこよすぎてもう私、悶絶です」  リカは感動のあまり泣き出しそうな勢いだった。 「た、確かにそうだね……」 「ジュン君はどの修行が好きですか?」 「お、俺?」 「はい、そうです。修行ってたくさんありますから!」  やはりリカは、ジュンがドラゴンボールファンであると勘違いしていた。というよりは変な思い込みだった。ジュンがファンなのは、せいぜいプロ野球のドラゴンズだった。 「あ、あの、俺……」  ジュンは立ち上がった。 「はい?」 「鍋……そう、鍋が火にかけたままで」  数百の脳細胞のニューロンが結合した。鍋なんて使っていない。なかなかの言い訳だった。 「そうですか。仕方がないですね」  リカは寂しそうにジュンを見送った。 だが玄関を出た瞬間、ジュンの手を握り締めた。顔が熱くなるのを感じた。 「また語らいましょう。では!」  最後のチャンスと思って、ジュンは誤解を解こうと口を開きかけたがその寸前で扉が閉まった。 「どうしようか……」  いくら思案してもしょうがなかった。 † ジュンは一度自宅に戻り、故郷の土産を手に、次の部屋に向かった。  扉越しに、グツグツと湯が沸いている音がした。中に誰かいるようだった。 ここの部屋に住んでいる人は、入試の時にも一度会っていた。同じ県出身で話が弾んだが、互いにライバルで、前衛的な姿勢から抜け出せなかった。 しかし今は同級生。そしてなによりも美人だった。だからこそ親友になりたかった。 「こんにちは。川端ジュンです」 二回ノックをした。 「はい?」
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