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レナは両手に生協のビニール袋を持ち、右の袋からはネギが飛び出していた。
「あの、ありがとうございます。でも、すぐ家なので、扉を開けてくれると助かります」
「鍵は?」
「あの、うっかり掛け忘れてて。でも川端君が守ってくれていたので安心です」
これ以上男心をくすぐる言葉は無かった。ついついいらぬ方向に想像を膨らましてしまう言葉だった。
ジュンが扉を開けると、レナは軽く会釈をして前を通った。
その間もジュンの目はレナをひたすら観察していた。
均整の取れたボディラインは、メリハリのある凹凸に官能的な美があった。Tシャツとデニムのパンツは、ラインがでにくいが時々見える体型によけいに惹かれた。
「あの、お茶でもいかがですか?」
「はい。ぜひ!」
竜宮寺レナさんは今までで一番よさそうな人だった。勝手な独断だが、外見だけでなく内面もすばらしい美女に間違いなかった。
「お邪魔し……」
ジュンは、レナの部屋に入った途端、体が凍りついた。
部屋の奥側の壁には窓がある。その壁の下半分を覆う棚が置いてあり、その上には巨大な戦車の模型が鎮座していた。
「あの、川端君、どうしたの?」
「なかなか、その、メタリックな部屋だね」
「あの三分の一スケールのレオパルドのこと?カッコイイよね、レオパルド。私の一番のお気に入りなんだぁ」
ジュンは適当に頷いて、示された通りに座布団に座った。目の前には古風なちゃぶ台があった。そのちゃぶ台の端にお土産の菓子箱を置いた。
目が慣れたところで周囲を見渡してみた。いたるところに戦車の模型や絵や写真があった。壁には陸上自衛隊の写真付きカレンダーがあった。写真は当然の事ながら戦車だった。
「戦車、好きなんだね」
ジュンは、香りが爽やかな紅茶を差し出してくれたレナに尋ねた。
「ええ、大好き。さっきも言ったけど、一番すきなのはドイツのレオパルド戦車。あの鋭角的な砲塔が萌えです」
「ハハ、萌え……ね」
ジュンは愛想笑いを浮かべた。
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