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いつもと何一つ変わることのない、見慣れた帰り道。俺はそれをいつもとは違い、全力で駆けていた。
「ハァ・・・ハァ・・・」
段々と見えてくる自分の家、何一つ変わりは無かった。その建物事態には、
「橋本達哉さんですね。」
唯一違うものそれは、家の前に立っていたスーツ姿の男性。彼は俺の帰りを待っていた様で、俺の名前を発し近寄ってくる。
「あんた誰だよ」
解ってはいる、コイツはゲームの主催者の使い。しかし、疑って掛かるとこにこしたことはない。
「私は今ゲームのアシスタントでございます。これを・・・」
アシスタントを名乗る彼は、手に持っていたアタッシュケースを俺に差し出す。
「これは?」
「ゲームの参加要項、ルール、支給品、その他諸々が入っています。お受取り下さい。」
俺はアタッシュケースに手を伸ばし受け取ろうとする。しかし、寸前で手を止めた。
「如何されました?」
「一つ聞きたい、これを受け取らずゲームを棄権することは出来るのか?」
「はい、可能です」
思いもよらない回答に俺は、鳩が豆鉄砲を喰らった様に動きが止まる。
「勿論棄権することは可能です。ですが、これは我々が与えたチャンスと思ってください」
「チャンス?」
「そうチャンスです。貴方はいつもこの世に退屈していたのではないのですか?
毎日同じことの繰り返し、これはそれを打破するチャンスなのですよ。」
そうだった、俺はいつも感じていた。いや、飽きていたんだ。毎日ただ同じことを繰り返すしかない日常に、こんな意味のない日常を過ごすことに意味などないのだと。
俺は差し出されたアタッシュケースに手をかけ、それを受け取った。
もう・・・後戻りは出来ない・・・
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