階段の一段目

6/6
前へ
/8ページ
次へ
いつもと何一つ変わることのない、見慣れた帰り道。俺はそれをいつもとは違い、全力で駆けていた。 「ハァ・・・ハァ・・・」 段々と見えてくる自分の家、何一つ変わりは無かった。その建物事態には、 「橋本達哉さんですね。」 唯一違うものそれは、家の前に立っていたスーツ姿の男性。彼は俺の帰りを待っていた様で、俺の名前を発し近寄ってくる。 「あんた誰だよ」 解ってはいる、コイツはゲームの主催者の使い。しかし、疑って掛かるとこにこしたことはない。 「私は今ゲームのアシスタントでございます。これを・・・」 アシスタントを名乗る彼は、手に持っていたアタッシュケースを俺に差し出す。 「これは?」 「ゲームの参加要項、ルール、支給品、その他諸々が入っています。お受取り下さい。」 俺はアタッシュケースに手を伸ばし受け取ろうとする。しかし、寸前で手を止めた。 「如何されました?」 「一つ聞きたい、これを受け取らずゲームを棄権することは出来るのか?」 「はい、可能です」 思いもよらない回答に俺は、鳩が豆鉄砲を喰らった様に動きが止まる。 「勿論棄権することは可能です。ですが、これは我々が与えたチャンスと思ってください」 「チャンス?」 「そうチャンスです。貴方はいつもこの世に退屈していたのではないのですか? 毎日同じことの繰り返し、これはそれを打破するチャンスなのですよ。」 そうだった、俺はいつも感じていた。いや、飽きていたんだ。毎日ただ同じことを繰り返すしかない日常に、こんな意味のない日常を過ごすことに意味などないのだと。 俺は差し出されたアタッシュケースに手をかけ、それを受け取った。 もう・・・後戻りは出来ない・・・
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加