わすれもの

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――ここは……何処だい? 見たところ神社……かねぇ? 言うことを聞かない右腕を使って上半身を起こすと、後頭部がずきりと痛んだ。 ――っつう……、なんだい何だい? やけに痛む後頭部を少年が気休めに、となでていると、手の平に妙な感覚を覚えた。 何気なく手の平を確認すると同時に、少年の顔は驚きと苦痛で歪んだ。 手の平には、生温くて刺激的な紅い液体がへばり付いていた。 ――へへっ、こいつはヤバイねぇ……、ああヤベぇよ……、こんなところで死んじまうのかねぇ? まぁ、神社のまん前で死ぬってのも酔狂なもんだろうさ。 これも天命ってやつなのかねぇ……。 「あのー、すみません?」 ――ほーら、幻聴まで聞こえてきやがった、もう手遅れってところかね? へへっ、やっと幻想郷に来れたってのになぁ。 「あ、あの……血とか出てますけど大丈夫です……か?」 ――へぇ、最近の幻聴ってのは人のことを気遣ってくれるのかい、まったく涙が出るねぇ。 「だ、誰か人を呼んできますね、絶対にそこを動かないでくださいよ!」 ――酔狂な話だよ、こんな血みどろな人間を前にして、怯えないで助けようとしてくれるなんて、ってあらら? もしかして幻聴じゃなかったり……? いい加減幻聴ではないという事に気がついたのか、少年はその目をゆっくりと開き、声の主の方に首を傾けた。 そこには、『女神様』がいた。
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