9636人が本棚に入れています
本棚に追加
/260ページ
会計が共同スペースへ戻るや否や、田崎は慌てて俺を自分の部屋に押し込もうと肩を押す。
「泊まって良いからっ、ひとまずここに隠れて!!」
「おい、ちょ……田崎?」
「お願いっ。村瀬がみんなに見つかったら、俺の平和が……!」
田崎の凄まじい真剣な表情に圧倒され、言うことを聞くしかなかった。
こいつ、意外と苦労してるんだな、と大人しく押されるまま田崎の部屋に入ろうとした、が。
「樹!!」
バンッ!!
とバ会長が共同スペースから出て来て、俺に気付くとそのまま田崎と俺を引き剥がす。
おいこら、何で腰に手を回してるんだ、この下半身野郎は。
「平凡……、この俺の樹を誑し込むとは良い度胸だ……」
「誰がお前のだよ」
「誑し込んでませんよ!?」
「樹。この平凡の何処が良いんだ? 目を覚ませ。体の相性か? それなら、この俺が忘れさせてや「すぐ下の方に持ってくな盛るなまず手を離せバ会長が!」……相変わらず、威勢が良いじゃねぇか」
何故か舌を舐め、臨戦態勢に入ってるバ会長の手を叩いて、田崎の後ろに隠れた。
すると、バ会長は驚愕の表情を浮かべる。
「そんなにその平凡が良いのか? 樹、俺はそんな子に育てたつもりはないぞ!」
「いや、育てられたことないから」
「……必ず、目を覚まさせてやるからな、樹!」
バ会長はそれだけ言い残すと、走って部屋を出ていった。
ミスター勘違いが去って、田崎はふぅとため息を吐く。
「……濃い。こんなことなら、井上たちとカラオケ行かないで、村瀬と和田くんと徹夜麻雀してる方が何倍も楽しかったよ」
「だから言っただろ。俺の大車輪が待ってたのに」
「何でちょっとマイナーな役満を」
「あれ、かいちょー帰っちゃったー?」
「あ、樹だ!」
「オタクではありませんか」
「……オタク」
共同スペースから、わらわらと人が溢れて出てきた。
お、副会長とかすげぇ久々に見たな。何かちょっと感動。
それより書記が会計の肩から顔を出すと言う、萌えを俺に提供してくれてるんだが。
わんこ×チャラ男美味いな畜生。
「ミスター勘違いなら帰ったぞ」
「あぁ、かいちょー。絶対勘違いするって思ってたけどねー」
「……そうとは思ってましたが、朱雀は争奪戦から抜けてたのですね」
「むしろ……オタクの、方」
「村瀬くん大人気だねー」
副会長、普通に争奪戦って言ったぞ。
しかも、「後はあの一匹狼だけですね」と呟いてるし。
副会長ナイス腹黒。
最初のコメントを投稿しよう!