君の部屋に侵入

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恐怖しか感じない。 無理矢理座らされた高価そうなソファから、ダイニングキッチンでバ会長の様子がはっきり見える訳だが。 会長が濃紺のエプロンを着、鼻歌でも歌いそうな上機嫌で何やら作ってる。 「…………」 帰りたい。 俺様会長が料理するの好きなんですキャハッ☆みたいなこと、あって良いのか? 腐っても金持ちの坊っちゃんだよな? しかも誰にも食べさせてないときた。 もう本当、土下座でも何でもするから帰してくれ。 いつの間にか食べれそうな匂いが漂う中、バ会長が喜色満面に盆を携えてキッチンから現れた。 「樹、出来たぞ!」 「ごめんなさい」 「……何で謝る」 バ会長はテーブルに料理を並べてくその手を見る。 お、見た目は食べられそうなビーフシチュー……にしては、随分水分がないな。 底を浸す程度の水分に首を傾げてれば、バ会長はそわそわしてる。 「さぁ、食え!」 そう言って渡してくるのは、箸とご飯。 うん? 「……ちょっと、聞いて良いか?」 「何だ?」 「これ、何」 「見た目通りに肉じゃがだろ!」 「……肉じゃが?」 待て待て、どう見てもちょっと水分足りないビーフシチューだろ。俺の知ってる肉じゃがは、もっとこう……! 恐る恐る箸を受け取り、ちょっとドロッとした芋を刺して口に含む。 「ど、どうだ?」 「…………どこまで予想を裏切れば気が済むんだよ。何で見た目的にめっちゃ濃い系なのに、味が病院食なんだ! 味薄いし焦げてるし、何か油ぎってて…総合的に気持ち悪……」 「…………俺、薄味派だから」 目を逸らすバ会長を睨む。 「ひとつ聞いて良いか。ちゃんとレシピ見たか?」 「ふん、俺くらいになれば、レシピなんて見なくても余裕だ!」 「はい来た! 初心者が必ず失敗する要因!! しかも何で初心者の癖に定番の肉じゃが! そこは卵料理とか、無難にカレーとか、もっとあるだろ!」 「肉じゃがは、男心を掴む料理のひとつだと言うからな」 「味見は?」 「する訳ないだろ、完璧に作ったつもりだ」 「…………」 あ、こいつもう駄目だ。 そう思った瞬間である。 俺は口直しのためにご飯に箸を伸ばす。米ならそう失敗しないからな。 だが、しかし。 何故か油でぎっとりしてて、食べられたものじゃない。 何でさっきから油攻め。 耐えきれなくなった俺は箸を置いて、立ち上がった。
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