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久遠は父親の言葉にため息を吐き、困惑気味で俯く詞子を一瞥する。
沈黙しているのは幼少の頃から慣れており、詞子にとっては苦痛ではない。
「親父、今は別でいい。」
「やっとわかったか、変態息子。」
「は?親父の方が変態だろうが。」
久遠はそう言い、詞子の腕を引っ張って部屋から出る。
「久遠様、よろしいのですか?」
「いい。」
詞子の腕を離して欲しい旨を伝えることが出来ずに黙ってついて行く。
「今日からここが詞子の部屋。気に入った?」
「あの……こんなに広い部屋は私、落ち着きません。久遠様、どうか変えてもらえませんか?」
「気に入らないか?」
ニッコリと微笑む久遠だが、その目はまったく笑っていない。
「い、いえ……気に入りました。この部屋がいいです。」
詞子はそう答えるしかない。
「そっか。気に入ったならよかった。今日は怖い思いをさせて悪かったな。ゆっくりしろ。じゃ、後で。」
「はい。ありがとうございます。」
久遠が襖を開けて部屋を出るのを確認し、詞子は緊張が解けてその場に座り込む。
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