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座り込んだまま考える。
何故自分が婚約者に選ばれたのかわからぬまま話が終わってしまった、と。
詞子は挨拶をするために組長に会ったことはあるが、久遠には半年間一度も会うことも名前を聞くこともなかった。
何故ならば、久遠は自宅遠くのマンションに住んでいたからだ。
それなのに。
何故久遠は詞子の名前と顔を知っていたのだろう?
一体何故?
詞子は内心久遠の態度に首を傾げていた。
緊張していたからか疲れ、すべては後で纏めて久遠に聞こうと思い、詞子のその場で蹲って寝ることにした。
何故ならば、詞子はただ寝穢(イギタナ)いしたかったからである。
――
――――
「……詞子?あぁ、寝ているのか。」
詞子が寝て数分経過した後に、久遠が音を立てずにお茶を持って部屋に入って来た。
詞子が寝ているなら無意味のため、仕方なくお茶を両方飲むことにし、詞子を布団に寝かせるために押し入れから布団を出そうと立ち上がる。
「若。」
襖の外から名を呼ばれ、久遠は布団を出すのを諦めた。
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