緋色の掟

理由

久遠の真剣な雰囲気に、ついそのまま答えてしまった。

答える必要はないような気はしたが、有無を言わせぬ雰囲気に詞子は素直にならざるを得なかったのだ。

何故気にするのだろう？

二人は仲良しに見えたのに、案外嫌っているのだろうか？

それともなにか他の理由か。

出会って間もない人の考えを理解するのは難解で、詞子は既に久遠の思考を理解する気がなくなった。

「詞子、氷室に恋するな。」

「…………え？」

急に一体なにを言い出すのだろうか？

「たとえ詞子が氷室を好きだとしても、俺は今更お前を手放す気はない。お前は俺の婚約者だ。いいな？」

「は、はい……」

久遠の態度の急変に驚き、詞子は問われるがまま返事をした。

「そうだ。詞子はそうやって俺の側にいて、常に肯定しろ。俺はお前の口から拒絶の言葉を聞きたくない。詞子、俺はお前を手放しはしない。なにがあっても、どんなことがあろうとも、だ。わかったか？」

「はい……久遠様。」

肯定以外の返事が出来ぬというのなら、言う事を聞くしかない。

何故ならば、どうせ久遠から詞子はもう逃れられないのだから。