第 I 章

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「その時に倒れてしまったのですね」エルマが確認する。 「目眩の原因はなんだったのかしら」ここでエステルも会話に加わってきた。 「このような事はよくあるのですか?」 「いいえ。倒れてしまったのは今日が初めてです」 「周りには誰かいなかったの?」 「誰も居なかったハズです」 アーサーの返事の後、司祭が改めて質問してくる。 「そうですか。何か今、違和感のようなものを感じていませんか?」 灰褐色の瞳は、まるで何かを探るよう。 「いえ。特には何も」 「そうですか」 しばらく俯いて考え事をしていたようだが、何か結論でも出たのか、やがて穏やかな表情に戻りアーサーを見やる。 「それでは剣の鍛錬で疲れていたのかもしれませんね。折角だから、ここでしっかり休んでいくとよいでしょう」 アーサーがなんと答えようか悩んでいる間に、エルマはエステルに指示を出す。 「では後の事はエステルに任せます」 「わかりました」というエステルの返事を確認すると、司祭は部屋から出て行った。image=410127821.jpg
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