第 I 章

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俺は、ぼんやりとこの部屋に来る前に出会っていた光り輝く存在との会話を思い出していた。 『ようこそフォルトゥーナへ、異世界から召喚されし者よ』 『貴方は、こちらの世界に顕現した後、とある人物と運命を共にする事になります』 俺は当然、心身ともに、こちらの世界へつれて来られたのだと勝手に思っていた・・・ なのに魂だけって! 自分の意思で動かせる体が無くてどないせぇっちゅうねん!! それにコイツ、アーサーっていうのか。 自分の思い通りに動かせる訳でない相手を、客観的に観察してみる。 俺がこの体に宿っている魂の存在だと気付いてから、アーサーを外側から眺めている自分が居る。 それは幽体離脱のように一歩離れた位置から俺自身を眺めているような感じ。 俺はベッドに座っているアーサーの傍(かたわ)らに立っていた。 俺の方がスタンドなのかよ・・・ 彼はエステルと同じく、くすんだ金髪をしており碧眼だった。 こちらの世界のスタンダードなのだろうか。 目鼻立ちがすっきりとした印象で、割といい面構えだと思った。 剣の稽古をしていたと言ってたっけ、さすがに筋肉質の引き締まった体つきをしている。 あぁ、そういえば俺の体はどうなったんだろう? もしかして魂が抜けて死人のようになってないだろうな・・・ あの光ってるヤツを召喚してこの世界から元の世界に無事に戻れたら、玄関のドアを閉めた直後とかにならないかな。 なんてったって、こちらの世界の神サマが願いを聞いてくれるんやし。 などと、都合のよい妄想をしていた時だった。
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