第 I 章

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二人の会話をなんとなく聞きながら、自分はこの世界で何をすればいいのかを思案していた。 思い出す。『こちらの世界では大いなる力を行使する事が出来るでしょう』 <輝く者>(俺、勝手に命名)の言葉を信じるなら、俺はこの世界では、すごい力を発揮できるハズ。 ギルドでのアーサーの成長を助けながら、早く<輝く者>を召喚するルーンとやらの情報を入手し、そして元の世界へ帰る。 よっしゃ!この作戦でいこか! 客観的にみるなら何の根拠もない考えだったけど、その時の俺はそんなふうに考えていた。 「少し考える時間をください。返事は明日、改めてお伺いした際に、させていただきます」 「はいっ、私もできる限りお手伝いさせて頂きますので、どうかよろしくお願いします!」 明確なYESではなかったが、少し光明が見えてきたせいかエステルの表情は明るかった。 さてアーサー自身が成長する為に、まずやる気になってもらう必要があるがどうしたもんか。 アーサーは礼を述べると神殿を後にする。 神殿といっても先ほどの大きさの部屋が2つと、あとは祭壇らしき物が存在する部屋があるだけの小さな建物だった。 その神殿を出て広がっていた景色、それはまるで中世のヨーロッパを彷彿とさせる町並みだった。 まぁ、中世ヨーロッパの町並みを知ってるかと問われれば、詳しくは知らないんだけど。 ほら、なんとなく持っているイメージってあるやん! ただ最初に感じた違和感、それは見慣れた電柱が無い事。 この世界が物凄く不便である事を思い知らされるのは、もう少し後なのだった。
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