第 I 章

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(普通だ・・・) 神殿から外へ出た時、思わずつぶやいてしまっていた。 その時、アーサーの体が一瞬ビクンとして止まる。 そして恐る恐る周りを見渡している。 ん?、俺の声が聞こえたんかな? もう一度、声を掛けてみようか。 でも町なかで挙動不審にはなってほしくないしな。 そんなに人の往来が激しいわけではないようだが、全く人が居ないわけでもない。 もう少し周りに人が居なくなったところで、もう一度声を掛けてみる事にしよう。 それまで、俺はじっくり周りの風景を観察する事にした。 俺は異世界の風景にどんな不思議なものが存在しているのか興味があったんだけど、至って普通。 21世紀の日本と比べると、確かに近代化された建物等は無い。 無いけど、ひと昔・ふた昔前の外国の風景と思えば納得できてしまう。 今、歩いているのは大きな石が敷き詰めてある、わりとしっかりした道路。 神殿はたしか村の西って言ってたのを思い出す。 村全体がなだらかな斜面になっており、その中で東側が低くなっている。 その為、神殿からは村の景色のほぼ全景が見渡せた。 神殿からやや中央よりの部分が村で一番高くなっており、そこには村を見下ろすように、こじんまりとした城があった。 村とはいっても、まあまあの規模があるようだ。 石畳の道の両脇には木造建築の、店らしき建物がずらりと並んでいるが、東に進むほど、さびしくなっていく。 しばらく東に向かって歩き、交差点のような場所で南に折れ、そこからすぐの家にアーサーは向かって行った。
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