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「誰ですか?」
長屋の横から出てきたのは黒い忍者服を着た男…山崎だった。
「俺だよ。それより、伊代ちゃんありがとな!」
「恥ずかしかったですよ~」
ぱたぱたと顔をあおぐ。
「俺達はさ、近藤さんや土方さんが笑ってるだけで嬉しいんだよ。こんなときでも笑っていてほしいと思ってる…。でも傑作だったなぁ~さっきのは」
意地悪そうに笑った。
伊代は口を尖がらせ、暗い道を進んで行く。
「提灯借りてきなよ!危ないよ!」
「すぐそこですからね!…月も出てるし…」
空には綺麗な三日月が輝いていた。
「伊代ちゃんは…いつまでも笑ってて…」
後ろを振り返るが、月の光が邪魔して山崎の顔は見えなかった。
「伊代~待ってよ~!」
斎藤の羽織を着た末吉がこちらに急いで走ってきた。寒いから貸してもらったのだろう。
「わわっ」
転びそうな末吉を山崎が抱き上げた。
「送ってきましょう。末吉くんが転びかねない」
「離せっ!この真っ黒男っ!」
じたばたするが、山崎はしっかり捕まえている。
それを見て伊代はくすりと笑った。
「末吉くん、為三郎くんや鉄之助くんと遊んで下さいね…」
「…うん」
「あはははっ!遊びたいんだぁ~」
「遊んでやるんだよ!」
-あなたたちの笑顔で私が救われていると言ったら、どう思いますか?
どうかいつまでも笑っていられますように-…
雲が月を隠さぬように…
彼らを歩く暗い道を、照らしてくれるように…
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