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「ん……」
行灯が一つだけ置かれた座敷に美緒のくぐもった声が揺れた。
重そうに閉じられた瞼が震え、薄く開く。
「美緒…?」
「…は、る……?……あれ?…ここ、どこ…?」
「…どこだろうね」
美緒はゆっくりと視線を彷徨わせてから私を見た。
「…なんだ、これ夢かぁ…」
「…大丈夫?具合悪くない?…水、飲もうか」
「ん…」
美緒の身体を支えながら起こし、切り子のグラスに入った水を口元に持って行く。
美緒はそれをすんなり飲み、大きく息をついた。
「…これ、夢なんだよね。でもすっごい幻想的。タイムスリップしちゃったみたい」
「…そうだね。もう少し、横になる?」
「うん。…なんかまだ頭がぼーっとする。膝、貸して」
美緒が私の膝を枕にして仰向けになる。
美緒の髪と体温が私の脚をくすぐった。
そのまま、まだ眠そうな目でじっと私を見る。
「…じゃあ私、夢の中で夢を見てたんだ」
「…どんな夢見たの?」
美緒の前髪を掻き上げると気持ちよさそうに目を閉じる。
美緒は猫みたいだ。
「イケメン達に囲まれる夢」
「なにソレ」
発想が美緒らしくて、思わず小さく笑ってしまった。
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