1544人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな私の目の前に、ぶっきらぼうにペットボトルのミネラルウォーターが差し出される。
目を瞬いていると、夏生は目を逸らしたままそれを私の胸に押し付けた。
ミネラルウォーターの側面に付いた水滴がTシャツを冷たく湿らせる。
その感覚で、初めて喉が水分を欲していることに気付かされた。
「…ありがと。あの…」
「飲んだら寝ろよ」
「…私は大丈夫だってば」
キャップを回すとパキッと心地良い音がした。
「寝ろ」の言葉を警戒していたけど、未開封のペットボトルだから安心して喉に流し込んだ。
「…女郎さんの親御さんのところへ事態の説明に行ってくる」
「もう無事だって知ってるからいいよ」
「…でも、おじさん達にも謝りたいから……」
「お前が謝る必要無い。それとも何、あいつのしたことを庇いたいの?」
「……」
…あいつ、とは航一さんのことで間違い無いだろう。
夏生の言葉にピリピリとした棘を感じ、堪らず顔を伏せる。
「…あの人達は…?」
「もうヘリで発った」
「……なっちゃん、あの人、私のお兄ちゃんかもしれない」
俯いたまま言うと、夏生が顔を上げた気配がした。
最初のコメントを投稿しよう!