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  あ、と思った瞬間に夏生の手が滑り込み、美緒を私から離れた場所へそっと移動させた。 ぐらぐらと視界が揺れる。 強めに目を擦った。 「…寝たく、ないのに…。酷いよ…」 「ごめん」 手を掴まれたかと思えば軽く引かれ、抵抗も出来ないうちに気付けば夏生のあぐらの上に頭が乗っていた。 「…もういいから、寝ろ。大丈夫だから」 「やだ…。まだ、直純さんの所へ行かなきゃ…」 自分の声が、低くゆっくりとしたものに変わっていく。 閉じてしまいそうになる意識を必死で繋ぎ止めていた。 「直純さんには話をしてある。眠れないだろうから今日はここで寝かせろってさ」 「……」 「また明日会える」 「………いや」 「え?」 「…起きたら、知らないところにいるかもしれないじゃない」 「……?何言ってんだ」 夏生の訝しげな声が上から降ってくる。 私はもう目を開けていられず、心の内にあるものを口走っていた。 「寝るのが、怖い」 「波瑠?」 どろどろとした重苦しい闇が私の身体に纏わりついて離れない。 あっちの世界に引き込まれる。 あちら側から、小さな私が感情の読めない瞳で私を見つめていた。 「わたし、邪魔…?」  
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