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  ――夢を見た。 薬の効果なのか、廓の魔力なのか。 ここで見る夢は、何故かとても優しい。 私は小さな背中に大きなランドセルを背負って走っていた。 いつもの待ち合わせの場所には、既にいつもの二人が立っている。 ボロボロのランドセルを背負った夏生と、制服の冬馬くん。 「おはよう、波瑠」 「おせーよ」 冬馬くんと夏生の身長差が大きい。 当たり前か。 伸びる盛りだもんね。 この背のバランス、懐かしいな。 二人は私の背後に目をやってから首を傾げた。 「あれ…?波瑠、ひとり?」 「あいつは?」 夢を見ている私は、あいつって誰だろうとぼんやりと考えていた。 夢の中の私が口を開く。 「おばあちゃんに怒られてる」 「また?」 「どうせまたいつまでも鏡の前で髪をいじってたんだろ」 …この夢は一体何だろう。 過去とは違う。 「あ、ほら来たよ」 「やっと来たか色ボケ野郎」 二人の視線を追って、もと来た道を振り返った。 足早に畦道を駆けてくる、冬馬くんと同じくらいの中学生。 綺麗な茶色の髪が風に揺れる。 私がその人の名前を呼ぶと、その人は嬉しそうに笑う。 制服には差し色の赤いベルトが目立っていた。  
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