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「そうか」
「はい」
「……」
「……」
お互い見つめ合ったまま一歩も動かず、沈黙が続いた。
直純さんも私に何と声を掛けるべきか悩んでいるあたり、もう全て聞いているんだろう。
「あの…御心配をおかけしました。それから、お月見も…」
そう切り出すと、直純さんが首を横に振る。
「…私も謝らなければならない。眠らせるように指示を出したのは私だ。…そうでもしなければ、身体を休ませてやれんと思ってな」
「あ、ううん、ありがとうございます。…おかげでスッキリしました」
意識がなくなる寸前に「強制的に眠らせるなんて酷い」みたいなことを夏生に言ってしまったけど、もしやそれも直純さんに伝わってしまったんだろうかと焦る。
笑って誤魔化そうと画策していると、真剣な瞳を真っ直ぐ向けられて息を詰めた。
「…無理はしなくて良い、と言うつもりだったのだが。本当に清々しい顔をしている」
「あ、はい。本当に」
「何度か様子を見にいったが、幸せそうな顔で涎を垂らしていたから拭いておいた」
「…………」
ショック。
ありがたいけど、それは知りたくなかった…!
そんな私の複雑な思いに気付く事もなく、直純さんは私の頭をよしよしと撫でる。
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