1543人が本棚に入れています
本棚に追加
「美那子さんのしたことは人として到底許せるものではないが、今はそんな事はどうでも良い。美那子さんに会ったところで咎めるつもりも無い」
「え?」
「波瑠は既に私の娘だからな」
「……」
決定事項を叩きつけるような言い方で不敵に笑う直純さんに目が釘付けになった。
波瑠は渡さない、と力強い目がそう言っている。
…ああ。
壁ドンどころの騒ぎじゃない。
初めての感覚にうっとりと酔いしれながら、そういえば前日に夏生も似たようなカッコイイこと言ってた気がするけど夢だったのかもしれないとぼんやりと考える。
不謹慎な胸キュンを隠すために紅茶のカップの取っ手を弄びながら、照れ隠しのつもりで何も考えず適当に口を開いた。
それが良くなかった。
「…そ、そんなこと言って、実際お母さんが目の前に現れたら気持ちがぐらつくんじゃないですか?」
「ぐらつく?」
「ぐらつくと思いますよー。私と違って超絶美人なんでしょ?会っちゃったら気持ちが再燃したりなんかして…」
「…何の話を」
「だって、直純さんもお母さんが好きだったんでしょ…!?」
ガチャン、と紅茶のカップを鳴らしてしまうと、直純さんが目を丸くした。
…何を言ってんだ。
と私の中にいる冷静な私が突っ込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!