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「えっ……」
ここで直純さん以外の声を聞くなんて初めてで身体が強張る。
いやそれより声の主が何故ここにいるのか。
「…なっちゃん」
顔を窓の方へ向けると、開け放されていた縁側から夏生が入ってくるところだった。
「……」
「……」
夏生の登場により、場の空気が冷え冷えとする。
直純さんは表情を消して夏生を見ていた。
何となく顔を合わせるのが気まずくて視線をうろうろと彷徨わせる私に、夏生が袋を差し出す。
「着替え」
「あ、ありがと…」
手渡された袋を覗いてみると確かに私の服が入っていた。
浴衣のままうろうろするわけにもいかないからありがたい。
…この際、どうやってこの服を持ってきたのかは追求しないでおく。
「…食い終わったんなら着替えてくれば」
「あ、うん」
「着替えたら謝罪行脚に付き合うから」
「え…」
ぱっと顔を上げると夏生と視線が絡んだ。
…謝罪行脚って。
「行くつもりだったんだろ」
「うん…」
確かに今日は全員に謝って回るつもりでいたけど…まさか一緒に行ってくれるとは。
「き、着替えてくる!」
そのまま脱衣所に飛び込んで着慣れた服へ着替えた。
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