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「……波瑠?」
はあ、と重い息が肺から押し出されたのを引き金にして、次から次へと強制的に空気が排出されていく。
圧迫感のある息苦しさに下を向くと、貧相と言われたささやかな胸が大きく前後しているのがわかった。
「…なに、こ、れ…っ」
「波瑠…!」
気付けば指先がじりじりと痺れ、心臓が壊れたように鳴り響いている。
苦しい。
ちゃんと息をしているのに、息が出来ない。
「はぁっ、はぁっ、」
「波瑠、落ち着け!ゆっくり息をしろ!」
「…はっ、…はぁっ、はぁっ、」
夏生が焦ったように私の背中をさすってくれるけど、その言葉が耳に入らないくらいパニックに陥っていた。
「波瑠…!大丈夫だから、落ち着け!」
「はーっ、はーっ、」
「波瑠!」
目眩に襲われる中で、夏生が動いたのがわかった。
次の瞬間には夏生の腕が後ろから伸びてきて、背中からすっぽりと包み込まれる。
「……っ!」
反射的にその手を振り払おうとした。
だって、苦しい。
もがかないと死んじゃうんじゃないかってくらい、苦しい。
夏生は暴れる私をものともせず、腕をしっかりと固定したまま私の耳元に顔を寄せる。
「落ち着け。大丈夫だ。…ゆっくり息をしてると楽になってくるから」
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