蒼穹、高く

25/30
前へ
/1229ページ
次へ
  ……… んん? 夏生に送りかけた視線が途中で止まる。 …ついに幻聴が。 私の身体、どうしちゃったんだろう。 何かの病気かもしれない。 「まあ、『鳳来』が普通の旅館だったらの話だけどな」 「…ん?」 「ん?」 「……何の話を、してるの?」 「お前を嫁に貰いたかったって話だろ」 「……ん?」 「もう大丈夫そうだな」 話の途中でそう言われ、まだ息苦しさはあるものの自分の呼吸がかなり落ち着いてきているのに気付く。 絡んでいた指が離されたので手をグーパーしてみる。 いつの間にか指の痺れも消えていた。 「……」 「過呼吸は初めてか?」 「…これ、過呼吸?」 「そう」 これが過呼吸…。 話には聞いたことあるけど、これほど辛いものだとは。 つい数分前の事態を思い返すだけでまた心臓が早くなり、恐怖心を煽られる。 「…ごめん。俺が悪い。もっと質問に気を遣うべきだった」 「え?ううん、大丈夫…」 「大丈夫じゃねえよ。真っ青な顔しやがって」 後ろの夏生からは私の顔が良く見えるんだろう。 横顔に視線が突き刺さる。 私はそれに向き合えず、自分の身体の前に伸ばされた夏生の腕を眺めていた。  
/1229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1543人が本棚に入れています
本棚に追加