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…さっきの言葉はどういう意味なんだろう。
そればかりが思考を埋め尽くしていく。
夏生の腕のラインを目で追っているうちに、やっと現状を把握した。
私とソファーの背もたれの間に入った夏生は私の身体を足で挟むように座り、前に腕を回している。
さっきまで、この状態で指を絡ませ合っていた。
背中にぴたりと寄せられた体温が、体調の回復と共に現実味を帯びてくる。
「しばらくは思い出さない方がいいな。この部屋は大丈夫か?怖いようなら直純さんちに戻って…」
「だ、大丈夫。ここでは別に何も」
「また発作が起きそうになったら言えよ」
夏生の脚の間で、至極近い位置で交わされる会話。
……これはまるで。
いや、まるでじゃない。
私は夏生に後ろから抱きすくめられている。
そう実感してしまうと一気に顔に熱が溜まっていく。
落ち着け私。
昨日だって抱き合った仲じゃないか。膝枕だってしてもらったし。
今更この程度で動揺することはない…!
「た、対処法…、あの、慣れてるんだね」
「ああ、…直純さんの発作を何度か見てるから」
「え…!?」
その言葉に顔の熱を忘れ、勢い良く振り返ると至近距離の夏生が驚いたように目を見張った。
鼻が触れ合いそうなほどのあまりの近さに私も息を呑む。
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