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「お前も気をつけろよ。発作が起こっても、焦らずゆっくりを心掛けろ」
「うん」
「いつも俺が近くにいるとは限らないんだからな」
それだけ言うと夏生は大きな欠伸をしてこちらに身体を傾けてくる。
びっくりして口から心臓が出たかと思った。
「ちょ、ちょっと」
「眠い。どいて」
「わぁ!」
夏生は寝そべりながら、私をソファーから押し出した。
お尻がずるずると滑って床に落ちる。
「ベッド行けば良いじゃん…!」
「面倒臭い」
わらしみたいな事を言ってさっさと目を閉じてしまった。
冬馬くんも夏生も、きちんとベッドで寝ることはないのだろうか。
「まだいても良いけど、帰るなら一声掛けて」
「うん…」
腕を枕にしながら横たわる夏生をじっと見た。
瞼がぴたりと閉じられ、今にも寝息が聞こえてきそうだ。
…私は寝させてもらったけど、夏生はあれからずっと起きていたんだろう。
申し訳ない気持ちで夏生の寝顔を見つめていた。
『嫁に貰いたかったって話だろ』
あの言葉は何だったんだろう。
私を落ち着かせる為だけに言った言葉なのかもしれないけど。
――不意に
『ナツキは波瑠を女の子として想っているよ』
航一さんの言葉が蘇った。
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