残暑、去り難く

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  気付けば私は廓の外にいた。 あのあと会話があったのかも覚えていないし、部屋を出る時夏生に声を掛けてきたかどうかもわからない。 ただ呆然と自室へ戻る。 おばあちゃんの遺影の前に力無く座り込み、頭の中の整理をしようと試みるが上手くいかない。 …おばあちゃんに航一さんの事を教えなくちゃ。 孫がもう一人いて、少しの間私の近くにいたなんて知ったら驚くだろうな。 それから、お母さんがどこかで元気に暮らしてるって事も。 両手を合わせて「えーと」と呟く。 「…おばあちゃん、……」 なっちゃんが、私の事好きなんだって。 「…………」 合わせていた手がのろのろと下がり、だらしない猫背のままおばあちゃんの遺影を見つめていた。 頭の中はぐちゃぐちゃ、と言うより真っ白に靄がかっていた。 そんな状態で昼食に呼ばれ、何を食べたのかわからないまま再び部屋に籠もる。 そうしているうちに、どんな顔して夏生と会えばいいんだろう、という焦りが生まれてきた。 何度も時計を見ては部屋をうろうろしていると、突然鳴り出した着信を知らせる携帯に驚いて飛び上がる。 知らない番号に恐る恐る出てみると、着信の相手は意外な人物だった。  
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