残暑、去り難く

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  「普段は夏生伝いに外と連絡を取るんだけどね。今日は、特別」 特別、と何か含んだ言い方でニコニコと笑う冬馬くんを見て心臓が変な音を立てた。 「あの、ごめんなさい。私のせいで皆が」 「ああ、そんな事はどうでも良いんだよ」 「ど、どうでも…?」 「それより、今朝は大変だったらしいね」 今朝。 夏生の真っ直ぐな目を思い出して鼓動が速まっていく。 「…や、あの…た、大変っていうか、何て言うか…」 「急に呼吸出来なくなって怖かっただろう。夏生が、父さんが過剰に心配するからあっちに伝えてないって言っていたけど」 「………」 …過呼吸の事か。 緊張が解けてがっくりとする反面、安心して体温がじわじわと戻ってくる。 「…大丈夫。しばらく怖い事を思い出さないように気を付けるから」 「そうだね。もし続くようならちゃんと相談するんだよ」 良く考えれば、からかわれるのを嫌う夏生が冬馬くんに今朝の事を話しているとは思えない。 それに、あれは本気じゃないかもしれないし。 なんだ、冬馬くんは私の体調を心配して呼び出しただけなのか。 「それで、夏生に何を言われたの?」 「……」 ニコニコと。 その笑顔に底知れない恐怖を覚えて固まる。  
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