残暑、去り難く

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  「それ、本気で言ってる?」 「え…?」 そっと顔を上げると、じっと私を見つめる真剣な瞳とぶつかった。 夏生と良く似たそれは、今は静かな怒りを携えている。 昇り過ぎた体温が、今度は急速に下がっていく。 「夏生の気持ちを無かったことにするなんて許さないよ」 「……」 冬馬くんのこんな表情、初めて見た…。 いや、夏生に対して怒る場面は何度も見てきたけど、私にこういう感情を向けられること自体が初めてで思わず目を見開いてしまう。 「ずっと昔から大切にしてきた想いなんだ。見て見ぬ振りはさせない」 戸惑う私にブレる事なく真っ直ぐに言葉をぶつけてくる。 冬馬くんらしからぬ厳しい物言いに言葉が詰まった。 「……、あの…、ご、ごめんなさい…」 なんとかそれを口にすると、冬馬くんは目を細めながら私の頭に手を乗せる。 私は固まったままその手を受け止めた。 「…キツい事を言ってごめんね」 「ううん…」 「波瑠は可愛いよ。出来る限り我が儘を聞いてあげたいと思う。でも僕は、波瑠より夏生の方が大切なんだ」 「……」 不思議とショックを受けないのは、夏生の名前を口にする冬馬くんの目が優しいからだ。  
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