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その事実を証拠のように突き付けると、冬馬くんが困ったように笑う。
「…その辺の事情は夏生に聞くと良いよ。気になる事も全部ね」
「……いや、聞けないでしょ……」
どんな顔して会えばいいのかもわからないのに…!
冬馬くんは青ざめる私を落ち着かせるように背中を優しく撫でてくれた。
「答えがどうであれ、話さなきゃ何も進まないよ」
「で、でも」
「そう波瑠が教えてくれたはずなんだけどな」
「え……?」
血の溜まった顔を上げると、優しく私を見つめる瞳とぶつかる。
「…僕も夏生と話したから誤解や思い込みが解けたんだ。今、夏生との関係が成り立っているのは波瑠があの時尻を叩いてくれたおかげなんだよ」
「……」
「ね?だから波瑠も勇気を出して」
…そんな風に言われたらもう「無理」なんて言えない。
膝を抱え直すと小さく頷いた。
「…わかった。けど、覚悟を決めるまで少し時間かかるよ。とてもじゃないけど、今日明日なんて…」
「大丈夫だよ。きっかけさえあれば」
「きっかけがそう簡単にあるわけ、」
その時、部屋の中に聞き慣れた綺麗な鈴の音が鳴り響いた。
…この音は。
「夏生が帰ってきたようだね」
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