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「……!!」
このタイミングで…!?
「…絵を描きに行ったから、しばらく戻らないんじゃなかったの…!?」
「違ったみたいだね」
冬馬くんは動揺もしないで真顔でしれっと言いのける。
その顔が笑っているようにも見えた。
頼れないと思った私はとりあえず立ち上がるけど、どうしていいのかわからず慌てふためく。
…私にはまだ夏生の顔を見る覚悟が出来ていないのだ。
今この部屋を飛び出したら、夏生と鉢合わせしてしまう。
「…!ど、どうしよう!」
「困ったね。とりあえずキッチンに隠れたら?」
「キッチン!?すぐそこじゃん!見つかっちゃうよ!」
「忘れ物を取りに来ただけかも。すぐだから大丈夫だよ。ほら、隠れるなら急ぎな」
「……!」
私は涙目になりながら冬馬くんが指差すキッチンの陰へと転がり込んだ。
上から覗き込まれたら確実に見つかってしまう場所だ。
なるべく小さくなるように身体を折り畳み、息を潜める。
ああ、心臓が壊れそう。
また過呼吸になったらどうしてくれる…!
ドアが開く音がして、冬馬くんが「おかえり」と言った。
人の気も知らないそののんびりとした声に恨み言を言ってやりたかったけど、増えた人の気配に私は大人しく固まるしかなかった。
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