残暑、去り難く

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  ……。 そうか、私は何も言わずに立ち去ったのか。 私、最悪じゃん…。 余計顔を合わせ辛い…! 自身の行動にへこんでいると、冬馬くんがとんでもないことを口にした。 「夏生は波瑠のどこが好きなの?」 ちょっとーーー!!! 冬馬くん、私に怒ってるからこんなことすんの…!? もうやめて…! 私のいないときにして…! 「……何、急に」 夏生も驚いたように聞き返すけど、冬馬くんからの反応は無い。 見てなくてもわかる。 冬馬くんは今、困惑する私の存在を知りながらニコニコしている。 …知らなかった。 冬馬くんってこういう意地悪するんだ。 「…どこって言われても」 「全部?」 「全部じゃない。騙されやすいところは腹立つ」 「じゃあそれ意外の全部だね」 「………」 …もう無理…。 聞いてられない。 顔に血が溜まりすぎて弾けそうだ。 心なしか目眩もしてきた。 夏生がそこにいなければ、飛び出して冬馬くんに訴えられるのに。 「さて。喉が乾いたな。夏生、コーヒー淹れてくれないか」 …………は? 何の脈絡もない会話に驚いたんじゃない。 だって、コーヒーなんて淹れに来たら。 淹れに来ちゃったら。  
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