1543人が本棚に入れています
本棚に追加
慌てて立ち上がると、私に悪魔の笑顔を向ける冬馬くんと目が合う。
…爽やかなはずの冬馬くんの笑顔が黒く見えた。
「波瑠。僕の方が座敷童様との繋がりが深いんだよ」
「……」
意味深な言葉に目を瞬く。
まるで私がわらしに必死で祈ったことを知っているような口振りだった。
「…?何の話だ。兄貴、風呂行くなら浴衣用意するよ」
「自分でやるから良いよ。それより、波瑠が夏生に聞きたいことあるんだって」
「………!!」
冬馬くんが閉めるドアを呆然と眺めながら、魂が抜けていくのを感じた。
冬馬くんは私を逃がしてくれるつもりはないらしい。
私だって心の準備が必要なのに。
…いや、時間置いたら余計切り出しにくくなったかもしれないけど。
いなくなった相手に心の中で抗議していると、密かに目の端で捕らえていた夏生が私に近付いてくるのがわかり、思わず身を固くした。
「コーヒー飲む?」
「…え、あ、」
…あ。コーヒーね。
こっち来なきゃ淹れられないもんね。
背後のコーヒーメーカーをチラ見しながら棚づたいを蟹歩きし、夏生の脇をすり抜けようとした。
「あ、ごめん。まだお前のカップ洗ってねぇわ」
「あ、いいよ。私が洗…」
最初のコメントを投稿しよう!