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夏生とまともに視線が絡むと、甘いむず痒さに胸が騒ぐ。
過呼吸の感覚を思い出す。
落ち着かない。
「な、なっちゃんさあ、私のこと嫌ってたのに、なんで」
「はぁ?」
夏生の眉間に皺が寄る。
それでも後に引くことを許さない空気が私を追い詰めていくから、このまま言葉を続けるしかない。
「嫌ってたじゃん、私のこと!」
はっきり言い切ると何も知らないようなキョトンとした顔で夏生が私を見る。
今度は私の眉間に力が入った。
この野郎、あの暗黒の三年間を無かったことにするつもりか…!
特にあの、雨の日のバス停での出来事は私の心をズダボロにしたというのに…!
「すっとぼけないでよね!私、傷付いたんだから!」
「…そんなの覚えてたのか」
私がまくし立てると夏生は気まずそうに目を逸らす。
「そんなの」という扱いをされたことにお腹の中からじわりとした熱が込み上げた。
告白された甘い雰囲気なんか、既に消え去っている。
「…正直、今朝思い出したんだけど。でもあれだけ露骨な態度取られればバカだって気付くし根に持つよ!」
「…ごめん。あの頃はガキだったから」
ごめんで済むか!
「子供って歳でもなかったじゃん!子供だから私が嫌いだったって、意味わかんない。私、夏生に何かした!?」
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