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「…俺、そんなこと言った?」
「言ったよ…!忘れるなんて酷い!」
弄っていたタオルを握り締め、感情のままに振り上げる。
夏生に打ち付けたタオルは弱々しい音を立てるだけで、何の効果も無いようだった。
「ちょっ…落ち着け」
「うるさい!最低!…あれで、私がどれだけ…!」
喉の奥が痛みを伴ってキュッと狭くなり、目頭がじわりと熱くなった。
やっぱり夏生の「好き」なんて信用ならない。
なのに夏生は私を観察するかのようにじっと見つめてくるから、顔を見られたくなくて俯いた。
それが悔しくてもう一度タオルを振り上げた時、タオルごと手を掴まれて息が止まった。
「波瑠」
「……!」
俯いた頭のすぐ上から聞こえた低い声に身体が震え、掴まれた手からは熱が広がっていく。
「…何か勘違いしてるみたいだけど、俺がお前を嫌うなんて有り得ない」
「……!で、でも」
「ずっと好きだったけど」
「……!」
ストレートな言葉が私の脳と心臓をガツンと揺さぶり、顔が発火しそうなほどに熱くなった。
俯いてて良かった。
今自分は、どんな顔をしているんだろう。
掴まれた手をそっと下ろされるけど、手首は捕らえられたままで。
私は自分の手を包む夏生のそれをひたすら見つめていた。
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