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突然訪れた沈黙と夏生の表情に息を詰める。
…なんか私が悪いことしたみたいじゃん。
理不尽な罪悪感に目を泳がせていると、夏生の唇がゆっくりと動いた。
「…そうだな。最悪だ」
「……」
苦しいのに苦しいと言えないような表情で私を見る夏生に、胸の奥がざわついた。
「…本気でそいつと向き合おうとした時期もあるけど、やっぱり駄目だった。傷付けて、逃げて終わった」
「……」
「他に、何か聞く?」
「…ううん、もう大丈夫…」
いつから、とか。
どっちから、とか。
そもそも誰なの、とか。
とてもじゃないけど、聞ける雰囲気じゃない。
それでも「向き合うつもりだった」という夏生の真剣な気持ちを知ることが出来ると、下がりきっていた夏生の株もゆっくりと上昇し始めた。
強張っていた頬に感覚が戻ってくる。
夏生はそんな私の顔を覗き込んで、ほんの少し安心したように溜め息を吐いた。
「…こういうの聞いて、今まで通り俺と笑って話せる?」
「話せるけど…」
「本当かよ。意識し過ぎてガチガチになってる姿が目に浮かぶけどな」
「だ、大丈夫だってば!」
自信はないけど。
きっと、しばらくは夏生の言う通り意識しちゃうけど。
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